薬剤師と法的責任の関係性
更新:2023/04/26
[不安と悩み]薬剤師の法的責任が問われ始めたのは、薬学部の6年制教育がスタートしてからです。
厚労省からも医政局長通知が出され、国によって明確に薬剤師の職能拡大における方向性が示されているのです。
さて、この結果、薬剤師の仕事はどのように変化したのでしょうか☆☆☆
薬剤師の法的責任にはどのようなものがある?
薬剤師の法的責任に関連する事柄を挙げていくと、バイタルサインチェックやフィジカルアセスメントの拡大、さらにCDTMの浸透などが挙げられます。
このCDTMとは、医師の診断を前提としつつも、薬剤師と医師が合意した治療プロトコルに基づいて、薬剤師が主体となって薬物治療管理を行うものです。
1970年代後半からアメリカで誕生し、育まれてきたCDTMは、薬物治療の質、そして費用対効果を高め、なおかつ医師の負担の軽減につながるなど顕著な医療への貢献がアメリカ本土では認められています。
当然のことですが、このように薬剤師の権利が大きくなると、それにともなって責任も大きくなります。
その結果生まれる責任を大きく3つに分けると、民事責任、刑事責任、行政責任というものが考えられます。
この3つのうち、刑事責任や行政責任は、起こると重大なことですが、これは基本的には重大な被害が生じたり、悪質な故意のミスがあった、といったような場合にしか問われないので、それほど意識する必要はないでしょう。
なので、一番問われやすいのが民事責任であると言えます。
この責任に最も親しい立場で働いているのが病院や調剤薬局といった調剤を行う仕事でしょう。
調剤過誤がもっとも民事責任に繋がる可能性のある事柄で、結局のところ、やってしまったことに対してお金を払わなければならない、損害賠償ということになります。
薬剤師の法的責任における損害賠償とは
薬剤師の法的責任、民事責任のところの損害賠償責任、ということですが、その請求権の根拠は、法律から見ると2つあるとされています。
まずは契約責任に基づいた民法の415条、そして不法行為責任に基づいた民法の709条です。
この2つによって、損害賠償請求権というものが発生します。
この不法行為責任という言葉が出てくる典型例は交通事故だといえます。
契約責任は、その響きから企業などで契約をしたのに契約を破った、もしくは期限などの契約を求められたとおりに履行しなかった際に負わねばならない責任ということですが、不法行為責任になると、契約がなくても、他人の持つ権利は害してはいけない、ということになります。
そのため交通事故のように、車で歩行者を勝手にはねてしまえば、それは相手を害したことになりますので、その被害を与えたことに対して、損害を賠償しなければならない、というような責任になります。
これが調剤薬局や病院などになると、まず契約責任は、患者さんと薬剤師、およびその薬局の開設者、管理薬剤師などが絡んできます。
結論からいうと、契約責任に関わってくるのは薬局の開設者です。
あくまでも薬剤師や管理薬剤師は薬局の開設者と患者さんとの間にある契約(薬を希望する場合、その薬を提供する)のもと、薬剤師や管理薬剤師が手足となってくるので、契約責任
として責任を負うのは開設者だけということになります。
しかし、不法行為責任は当事者が対象になるため、ここでは薬剤師が、そしてそれを管理している管理薬剤師が責任対象となるのです。
そのことから、責任内容は異なりますが、関わった全員が責任を負うということになります。
そのため、ミスが起きた際には、それを起こした薬剤師だけに任せるのではなく、また薬剤師も自分だけで対処するのではなく、病院、もしくは薬局会社としてお客さんに対応することが重要になるのです。
薬剤師の法的責任、使用者責任と不法行為責任
薬剤師の法的責任で特に開設者と管理薬剤師に関連する法律に民法715条の使用者責任というものがあります。
もし、被用者が何らかミスをして、誰か別の人に損害を与えてしまった場合は、その使用する者も責任を負わなければいけない、というような責任です。
この責任は、開設者が負うとことになります。
また、監督者というのが定められているので、管理薬剤師もその条文に従い、責任を負うことになります。
不法行為責任は民法709条に条文があり、その内容としては、「故意または過失によって、他人の権利、または法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」というものです。
これを法律的に分解し、要件として捉えているのは、この4つです。
「権利侵害」、「故意または過失」、「因果関係」、「損害」の4つになります。
まず「権利侵害」は、調剤過誤という健康被害であれば、損害とだいたい一体的であるものです。
「故意または過失」に関しては、故意は文字通り故意を持って何かしらのミスをした、ということで、過失に関しては、医師の処方ミス、薬剤師の調剤ミス、さらに患者さんの使用方法ミスなどが絡んできます。
3番目の「因果関係」というのは、患者さんの健康などに何らかの不具合が生じた時に、その原因が問題となっている違法行為の調剤ミス行為が原因になっているのか、もしくは患者さんに元々既往歴などがあって、調剤ミスと関係ないところが原因になっているのか、といったところです。
最後の「損害」は、財産的な損害というように、法律上では言われています。
つまり、ミス等が生じても、具体的な損害がなければ、「不法行為責任」は発生しない、ということです。
そのため、たとえ薬を間違えても、もし患者さん側がたまたまそれに気付き、薬局に戻ってきて正しい薬を渡すことが出来たのであれば、「損害」がないので原則的には法的責任はないことになります。
このように、様々な責任が絡んでくる薬剤師の仕事で、こちらでは主に調剤という面から掘り下げていきましたが、どのような仕事でも法律的なしばりというのは存在します。
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